「普段は問題なく使っています」と答えられたとき、そこで聞き取りを終えると、どの場面を指すのか分からないままになります。1対1の顧客ヒアリングでは、意見を否定せず、最後に起きた一つの出来事へ話を移すと、行動の順序と条件を確かめやすくなります。英国政府のユーザー調査ガイドも、一般論や理想の手順より、実際の話と具体例に焦点を当て、中立な追質問で詳しく聞くよう勧めています。GOV.UK「Using in-depth interviews」
この記事が扱うのは、面接の最初に並べる質問集ではなく、相手の答えを受けて次に何を聞くかです。「1対1」は参加者の人数の形式であり、「半構造化」は話題ガイドを持ちながら会話を進める方式です。二つを同じ意味として扱いません。
最初に、何を確かめたいか決める
たとえば架空のBtoBサービスで「初回設定のどこで止まるか」を調べるなら、欲しいのはサービスへの一般的な好意ではありません。最後に設定を試した日時、目的、操作順、関わった人、止まった箇所、代わりにしたことです。
面接ガイドには、開始質問と、回答に応じた追質問を分けて書きます。英国政府のガイドも、話題ごとに開始質問と考えられる追質問を用意し、事前に試して分かりにくい箇所を直すよう案内しています。GOV.UKのガイド
| 欲しい情報 | 中立な追質問の例 | 聞いた後に残すこと |
|---|---|---|
| 直近の場面 | 「最後に設定を開いたのはいつ頃ですか」 | 時点、端末、状況 |
| 行動の順序 | 「そのとき、最初に何をしましたか」 | 操作と次の分岐 |
| 判断の材料 | 「どの画面や情報を見て、そう決めましたか」 | 見た資料と判断 |
| 止まった箇所 | 「進めなくなったのは、どの操作の後ですか」 | 画面、表示、試した対処 |
| 代替行動 | 「その後、どうしましたか」 | 中断、相談、別手段 |
これらは編集部作成の質問例で、実顧客の発言ではありません。相手が話していない「困った」「失敗した」を先に決めつけないよう、状況に合わせて言葉を選びます。
「普段は」を一場面に変える会話例
以下は架空の会話です。
担当者:「初回設定は普段どんなふうに進めていますか」
利用者:「だいたい説明を見ながらやります」
担当者:「最後に説明を見ながら設定した場面を、一つ思い出せますか」
利用者:「先週、新しいデータをつないだときです」
担当者:「そのとき最初に開いたのは、どの画面でしたか」
利用者:「接続画面です。手順書は別タブにありました」
担当者:「次に何をしましたか。覚えている範囲で教えてください」
「だいたい説明を見ながら」という答えから、直近の出来事と実際に見た画面へ移りました。ここではまだ「手順書が分かりにくい」と結論を出しません。相手がどこで迷ったか、そもそも迷わなかったかを続けて聞きます。記憶が曖昧なら推測で埋めず、「覚えていない」と記録します。
「なぜ」を重ねる前に、行動と条件を聞く
「なぜその画面を選んだのですか」は使える質問です。ただ、同じ「なぜ」を繰り返すと、理由を後付けで説明してもらうだけになり、実際の順序が分からない場合があります。英国政府のガイドは、「そのとき誰がいたか」「その言葉はどういう意味か」「もう少し詳しく」など、相手の答えを受けた追質問の例を挙げています。GOV.UKのガイド
次の言い換えは、原因を確定するためではなく、経験を具体化するための例です。
- 「なぜ買わなかったのですか」→「最後に比較したとき、何を見て、どう決めましたか」
- 「なぜ使いにくいのですか」→「最後に操作が止まった場面を教えてください。その直前には何をしていましたか」
- 「なぜ説明を読まなかったのですか」→「そのとき、どの情報が目に入りましたか」
相手が一度に複数の話題を出したら、遮って別の質問へ飛ばず、自然な切れ目で戻ります。ガイドに従いすぎて新しい重要な出来事を取り逃がさないことも、英国政府の案内に含まれます。
記録は「言ったこと」と「こちらの解釈」を分ける
同じ架空会話をメモするなら、次のように分けます。
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 発言・行動 | 「先週、新しいデータを接続。接続画面を開き、手順書を別タブで見た」 |
| 未確認 | 手順書のどの箇所を見たか、接続が完了したか |
| 担当者の仮説 | 画面と手順書の往復が負担かもしれない |
| 次の確認 | 直近の画面を見せてもらえるか。ほかの利用者にも同じ場面があるか |
仮説を発言欄に書き込むと、後で「顧客がそう言った」と誤って扱う危険があります。録音する場合は同意を取り、個人情報の保存方法を決めます。英国政府のガイドも、開始時の同意と調査後の個人データの安全な保管を挙げています。GOV.UKのガイド
面接前後のチェックリスト
前:調べたい判断を一文にする。話題ごとに開始質問と追質問を用意する。「最後に」「そのとき」を使える場所を確認し、同意と記録方法を決める。
途中:相手の語句をそのまま使って聞き返す。具体的な一場面へ移り、順序、条件、他者の関与を聞く。記憶がない部分を無理に埋めない。長く話しすぎず、答えが意外でもガイドを柔軟に使う。
後:発言、観察、解釈、未確認を分ける。一人の経験を全顧客の傾向として一般化しない。複数人で共通する仮説を見つけても、必要に応じて行動ログやアンケートなど別の資料で確かめる。
開始質問を準備するときは顧客インタビューの質問例を参照してください。実顧客の発言から仮説を作り、人数や分布を確かめる場合はアンケートの取り方で対象と集計方法を設計します。AIで面接前の論点を広げるならAIペルソナの注意点も確認してください。
参考資料
- GOV.UK Service Manual「Using in-depth interviews」 — 追質問、実際の経験に焦点を当てること、同意と記録。
Persona AI 運営
/ シースリーレーヴ株式会社Persona AIの提供者として、AIリサーチの使い方と検証方法を紹介します。